美容室でかぶれ事故

50代男性が来店され、ヘアダイを希望されました。スタッフが頭皮を見たところ、すでに炎症が起きかかっていたので、ここでヘアダイをすると炎症が悪化することは間違いないと説明し、お断りしました。ところが、この男性は数時間にわたって「どうしてもヘアダイをして欲しい。」と言ってお店に居座りました。仕方なく施術をして、当日は満足され帰られました。

それから4週間後「ひどいカブレが発症して、まぶたが腫れて垂れ下がり、前が見えない状態だったため、病院にはほとんど行けなかった。自営の仕事も休んだので、50万円払え。」と、賠償請求で来店されました。本当にまぶたの腫れで前が見えないような顔の写真、体全体、太ももにも及ぶ炎症の写真を持ってこられました。

幸いにもアビリティお勧めの「施術後数日が経ってから発症したカブレも補償できるタイプの損害保険」に加入されていたので、保険の補償対象となりました。

しかし、自賠法(通常、怪我の賠償金を計算する法律)で計算すると、通院日数や炎症の具合から考えて、最大でも8万円となりました。来店時に無理にヘアダイをして欲しいと強要された経緯があること、それでも約8万円は支払えることを話しましたが、納得されませんでした。

約1ヶ月後、裁判所から民事裁判の呼び出し状が美容室に届きました。もしも、補償できないタイプの保険に加入していて裁判になった場合は、

  1. いくらの賠償金支払い命令が出るのか、その資金繰りを心配しなくてはいけない
  2. 美容室経営者または役員を出廷させなくてはならないので、日程調整が必要
  3. 法廷での話の組み立てを美容室側が行う、主張の証拠を示す方法を検討する、施術した社員と綿密な打ち合わせをするなどで、仕事どころではなくなる

以上、経営者もこの施術をした社員も大きなストレスとなり、経営上大きな打撃となるでしょう。

しかし、この美容室は万全な保険に加入していたので、

  1. 裁判所で決定した賠償金額は、保険支払いの対象なので、資金繰りの心配は不要
  2. 法廷には保険会社が派遣した弁護士が出廷してくれるので、美容室経営者または役員の出廷は不要
  3. 裁判中もほぼ通常の営業

と、なりました。この事故は約14万円の賠償金を支払うことで、和解となりました。

一旦裁判になってしまえば、美容師の資格を持っている以上「危険を察知して説明し断ったのだから、お店に過失はないのでは。」という主張は通らなくなります。

アビリティでは、今回のように、ヘアダイを希望されても安全上お断りするためのご案内を用意しています。

また、ここ10年来の国内大手保険会社の美容室向け賠償保険では「美容室内ですぐには炎症が発症せず、帰宅後に発症した場合は補償できない」保険が多くあります。しかも、この点について契約時の説明が不十分であることが多いので、注意が必要です。